自転車と街

―「自転車のある暮らし」プロジェクトがはじまります。

photo: Miki Chishaki

今回は、自転車とまちづくりについて考えてみようと思います。
80年代の終わりごろから世界の様々な都市で、自転車という移動手段に注目が集められました。たしかに自動車という交通手段は、私たちの世界を大きく変えました。交通量は常に計画をはるかに超え、都市計画の課題は、道路整備が大きな柱となってきたのは間違いありません。しかし私たちはどこかで、長い距離を移動することや、早く移動することに疑問を持ち始めていたのも事実です。イタリアのローマクラブが『成長の限界』というレポートを出したのは1970年代です。拡大する都市ではなく、バランスのとれた人間が生きる街としての可能性を追求し始めるのが、この80年代のエポックでした。
それからすでに40年が経ちました。日本の経済も発展段階から成熟段階へと移行し、テクノロジーも、予想を超えるスピードで進化する今、再び都市とは何か、私たちの暮らしとは何かということを真剣に考える時期がやってきたように思います。
2015年完成したポートランドのTilikum Crossing(ティリッカム橋)は、全米で初めて緊急車両以外一般の車は通れない橋としてつくられたことは有名です。
このことには、2つの大きな背景があります。一つは先にも伝えたモータリゼーションの発展への疑問です。そしてもう一つは、都市を拡大させないという考え方です。規模による価値より、そこで生きる価値を考える方向に移りつつあるのです。
世界のこの20年のまちづくりの歴史については、次回以降また書きたいと思いますが、自転車は、単なる交通手段やムーブメントを超えて、未来の都市のあるべき姿を見るためにシンボルとなってきたのは間違いなさそうです。
私たちはこうした自転車の持つ可能性に興味をもち、自転車での未来のまちづくりを考え始めました。

福岡でのプロジェクト開始

私たちが今、取り組んでいる福岡での2つのプロジェクトを紹介したいと思います。
福岡市の西新エリアに、自転車をコンセプトにした賃貸住宅2棟を計画しています。この計画で出会ったのは山田大五朗さんという、元日本代表のマウンテンバイクライダーです。彼は「Bike is Life」という名前で、オリジナル自転車を製作販売、ショップやカフェの運営、様々な自転車イベント、公共空間で自転車をつかった遊び場づくりやその管理、また行政と一緒に自転車道路の整備などに取り組んでいます。私たちは彼と一緒に、このプロジェクトの間取りを検討してきました。自転車を各住戸にそのまま持込み、メンテナンスや練習もできるような大きな土間スペースを設けたり、住戸の前にも自転車を眺めながら近隣や友人と団欒ができるようなスペースをつくる等、さらには1階部分にも入居者同士が集まれるラウンジスペースやイベント広場を設ける等、いろいろな提案をつくっています。

今回のプロジェクトの間取りイメージです。
一階部分では、バンクのような自転車で遊べるスペースも検討しています。

このプロジェクトを通して私たちは、自転車と街についてもっと情報を集め、多くの人と交流したいと考えて、知見者の方々にもインタビューを開始しました。
福岡は自然環境に恵まれたコンパクトな都市です。しかし福岡都心部は道路網が「T字」となっており、慢性的な交通渋滞も発生しています。自転車は、その意味でもこの福岡では画期的な移動手段ですし、何よりも今回の新型コロナウイルスの問題で密をさけるためにも有効です。自転車を通して街の未来を考えていくこと。ひいては未来の暮らしについて構想を広げてみることを始めたいと思います。ぜひみなさんものぞいて見てください。また福岡にお住まいの方は、これから行ういくつかの活動にもときには参加してもらえると嬉しく思います。

自転車と暮らしてみる。
https://bicycle.hoshikatta-kurashi-lab.com/

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