高齢者の孤独について

photo: Miki Chishaki

高齢者にとっての不安は、経済、健康、そして孤独です。これらは高齢でなくても人間の不安の要因ですが、高齢になるほど不安は高まります。さてこの3つめの孤独とは人とのつながりのことです。経済面と健康面は、ここでは解決できないので、まずは人とのつながりについて考えてみましょう。
高齢になって実感するのは、人とのつながりの少なさです。仕事を引退すると、人との会話が極端に少なくなります。経験の違う周りの人と会話が合わないという声もよく聞きます。また一人の何もしない時間が長くなると、余計に孤独感が増すものです。趣味に時間を割くとか、旅行に行くという人もいるでしょうが、やはりそこに孤独を打ち消す程の情熱を持ち続けるのは、難しいかもしれません。
ある研究者によると、幸福には「感謝される」ということが大きな要素だといいます。たしかに社会との関係が希薄になると、自分が社会の中で必要とされていると感じることが少なくなります。そう考えると、まるで教科書のような答えですが、やはり何かしらの仕事をするとか、ボランティアのような社会活動に参加するといった、社会の中に再び自分を置くことが近道のような気もします。わずらわしい人間関係もあるかもしれませんが、そこは経験の多い大人の人であれば、そのあたりの加減もコントロールできるでしょう。
有名な言葉で「一隅を照らす」という言葉があります。これは 自分の目の前の社会の片隅のような場所でも、そこを輝かせることで社会が変わっていくという意味です。この言葉の良いところは、誰にでも一隅は見つけられるということです。そういう生き方が、その人の周りの人を輝かせ、ひいては自分も輝いていくという言葉です。考え込めば不安は募ります。子どもや孫が来てくれない。妻や夫の具合が悪いとか、先立たれてしまった。そんなことも、高齢になれば自然に起きるものです。しかしそういうときにこそ、自分の環境の中でできる社会の中での役割を見つけて働き続けることが孤独を打ち消す秘訣かもしれません。小さな仕事でも多少の経済の助けにもなるでしょうし、働くことで健康も維持しやすくなります。そして何より、そうした社会の中で、何かしら「ありがとう」と言われる瞬間に幸福を感じるに違いありません。

ここまできて、今起きている新型コロナウイルスについて考えざるを得ません。こうした人との繋がりをつくること、ましては仕事をすることが、今は困難な状況です。しかしこうした時だからこそ、今できることを考えなければならないでしょう。ネットで仕事をするのも良いでしょう。近所のお店や企業のアルバイトでもよいでしょう。また、ボランティアに参加するというのもあります。人と多く接する仕事を避けながらも、社会に出ていく必要があるのです。家の周りを見渡し、危険の少ない環境を探して、その中で何かしらの可能性を考えることが、重要におもえるのです。このコロナの環境下で、「自宅で過ごす時間が多くなって楽しい」、「家族との時間が増えて充実している」、「自分の時間が増えて、家での暮らしが楽しい」などポジティブな声も多く聞きます。しかし一人で、しかも仕事がない人にとってこの状況は辛いことでしょう。社会との繋がりがある人にとっての自分の時間と、そうでない人の自分の時間では、この状況の受け止め方は全く違うはずです。
私たちはこの新型コロナウイルスによって、様々なことを学んでいます。会社に行かないことで近隣の商店へ買い物に行ったり、家の周りを散策したりという機会も多くなっているでしょう。あらためて街の魅力を発見したり、または魅力が少ないことに気づいたりするかもしれません。大型のスーパーに行くより、顔見知りの小さな商店の方が楽しいかもしれません。知り合いに会ったときの、たわいもない会話にほっとすることもあるでしょう。大都市の大きな街を中心とした暮らしから、身近な自分の周りの街が魅力的になることが、これからの都市のありかたかもしれません。そんなときに、自分もその魅力ある都市の一員として「一隅を照らす」ことができると幸福なのかもしれません。

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