毎日の食事を考える

kaka / PIXTA(ピクスタ)

「欲しかった暮らしラボ」では、ここ数回に渡ってキッチンの研究を進めています。今回はそこから派生して、毎日の食事について考えてみたいと思います。

皆さんは、昨日の夜、家で食事をしましたか?その際に、何を食べましたか?
よその家の食事というのは、なかなか見えてきませんが、以前ラボで調査をした際に、「家で食事をした人」のうち53%は夕飯に4品以上食べており、食事の内容も主食・主菜・副菜・汁物とバランスを考えた食事をとっているという結果が出ました。
単身世帯や夫婦共働きの家族が増えていることから、食事はますますシンプルになっているはずと思っていましたが、結果は上記にあるように半数以上の人が主食・主菜・副菜・汁物をとったり、季節を考慮したり、バランスの良い食事を丁寧に作ろうとしている意思を、そこには感じます。

しかしながら、日々生活をしていると「今日の夕飯は何にしよう?」と悩む声をよく聞きます。料理を作ることの手間はもちろんですが、多くの人がまず頭を悩ませるのが、日々の献立。
この背景には、男女の社会進出が進み、日々時間に追われていることもありますが、献立を1つ考えるにしても、食を取り巻く環境が変わり、(栄養を考えて)何を食べるべきなのか、(安全を考えて)何が安心して食べられるのか、(美味しさを求めて)何を食べたいのかを、無意識にそれぞれ考える必要が生まれたから、というのも理由としてあげられると思います。

そんな中、2016年ごろから、じわじわと人気を集めている本があります。それが料理研究家の土井善晴さんの著書、『一汁一菜でよいという提案』です。
この本の中で土井さんは、難しく考えるのではなく、日本人が昔から慣れ親しんできた一汁一菜という「ご飯、味噌汁、漬物を原点とする食事の型」を日々の食事として勧めています。
「これだけでいいの?」という気持ちにもなりますが、一汁一菜は栄養バランスにも優れていますし、誰でも作ることができます。そして、味噌とお米というシンプルな食事は、味に飽きることがありません。これなら忙しい私たちでも、実践することができそうです。

料理は毎日行う家事です。だからこそ余計なストレスを感じることなく、顔を洗ったり、部屋を掃除したりするのと同じで、毎日繰り返す日常の仕事の1つとして繰り返すことが大切だ、と土井さんは著書の中で語ります。そして、一汁一菜という無理なく続けられる、心の拠り所を持つことが私たちの日々の暮らしの安心につながると、土井さんは教えてくれます。

食が商品化する時代、いつでも、どこでも、なんでも手に入るようになりました。一汁一菜を通して、季節の野菜をふんだんに取り入れることで、自然観や季節感を感じるといった豊かさを感じることができるでしょう。もう一品おかずを足したい時は、「気持ちに、お金に、時間に余裕がある時に、作るもの。そうした時に作るおかずは、作る人にとっても、食べる人にとっても、楽しみでしかありません」とも、土井さんは言います。

皆さんは、どのように思いますか?もし興味があれば、一汁一菜で生活をしてみませんか?

 

参考文献:「一汁一菜でよいという提案」土井善晴/著(新潮社)