美味しさとは

takeuchi masato / PIXTA(ピクスタ)

コロナの喧騒が過ぎ去り、友人や同僚と食事をする日常が戻ってきました。今年の夏休みや連休は、誰かと食事に行ったという人も多いのではないでしょうか?
コロナ禍でも、同僚や友人とオンライン飲み会をしたり、遠くに離れた親戚とオンラインで繋いで食事を楽しんだりと、私たちは誰かと食事をすることに楽しさや、喜びを感じます。そして、誰かとする食事は普段にも増して美味しいものです。
好き嫌いはもちろんですが、誰と、どこで食事をするか。その時の体調や気分によっても、食事の美味しさは変わります。この「美味しさ」とは何なのでしょうか。 

 

美味しさは脳が判断する

実は食に関する科学的な研究が始まったのは、およそ100年前。ごく最近のことです。美味しさも、その例外ではありません。
最近の研究では、「味」は舌で、「風味」は嗅覚で感じていますが、美味しさの大部分は脳が担っていることがわかってきました。 

世界的な研究機関「better buying lab」では、世界有数の企業やホテルと手を組み、人気のないヘルシーな料理をどうにかしてお客さんに食べてもらおうと、「料理の名前を、美食をイメージさせるものに変える」という試みをしました。
例えば「肉なしソーセージ」という料理名を、ソーセージ作りで有名な地域名をつけた「カンバーランド地方のスパイス野菜ソーセージ」に名前を変更。たったそれだけのことで、ヘルシーメニューの売り上げは76%も上がったそうです。人は伝えられる情報で、感じる「おいしさ」が変わるということがわかりました。 

また別の実験では、苦味の強い液体を飲む前に、「苦くない」と被験者に伝えると、被験者の脳がこれから口にする味を「苦くない」と予測。実際にその液体を飲んでも「苦くない」と判断を下すことが確認されました。
このように、私たちが感じている美味しさの大部分は脳で感じているのです。 

 

誰かとする食事は美味しい

地球上の多くの生物は、血の繋がった家族とだけ食事をします。家族以外の誰かと一緒に食事を取るのは、人間とまれにチンパンジーだけだそうです。
2017年にイギリスの研究チームから発表されたチンパンジーに関する論文では、仲間と食べ物を分かち合う際には、脳から「オキシトシン」というホルモンが放出されていることがわかりました。このホルモンは、「幸せホルモン」「愛情ホルモン」と呼ばれており、幸福感を得たり、相手への愛情や信頼感を強めたりする働きをしています。
これをよく調べてみると、通常仲間同士で毛繕いをしているときよりも、仲間と食べ物を分かち合っているときの方が、オキシトシンが2.5倍も出ていることがわかりました。これは、一人で食事をしているときの5倍の量にも達するそうです。この結果は、人間にも当てはまるということもわかっています。 

私たち人間は、はるか昔から仲間と食事をしていたことが認められています。食事を通して仲間を増やすだけでなく、ともに助け合って生きていけるように、集団の絆を強めていたのでしょう。これは人類の繁栄にとって非常に大切な行為であったと考えられます。
そしてそれと同じぐらい大切なこととして、食事を通して幸福感を得たり、リラックスしたり、そうした気持ちで食事を楽しむことで、食事の美味しさが増すということを、人は本能的に知っていたのだと思います。
私たちの周りには食事の情報や、お金を払えば手に入る美味しい食事が溢れています。美味しいことはもちろんですが、美味しく食べることの方が、私たちにとっては大切なのかもしれません。あなたは、誰と、どこで、どんなものを今日食べますか?そのとき美味しいと感じますか?ぜひ考えてみてください。 

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