「住みよいまち」から「自ら暮らしを楽しむまち」へ

【公園のある暮らしインタビュー vol.3】and PARK Moriya 永井大輔さん

草ぼうぼうだったあの公園で、この日は子供たちが走り回っている。ありそうでなかった風景が、場の可能性を拓いていく。
撮影: KIJITORA studio.

「“住みよいまち”から“自ら暮らしを楽しむまち”へ」をコンセプトに、茨城県守谷市のヒマラヤ杉公園で開催している定期マーケット「and PARK Moriya」。2019年5月にスタートしたこのマーケットには、こだわりのフード、アクセサリー・雑貨、家具・木工、アートフラワーなど、地域に根ざした選りすぐりの店が出店し、毎回1,000人を超える来場者でにぎわいを見せています。日々の暮らしに、ほんの少しの豊かさをプラスすることで、地域のヒト、モノ、コトがつながる場を創り出していく—そんなまちづくりの活動に取り組むand PARK Moriyaの発起人、永井大輔さん(一般社団法人P-players理事)にお話を伺いました。

「and PARK Moriya」誕生のきっかけは、いつも見かけたあの公園

働く世代2万人を対象に、日経BP総研が実施した「シティブランド・ランキングー住みよい街2017―」で、武蔵野市、大野城市と並んで1位に選ばれた守谷市。永井さんは、2014年に家族と共にこのまちに暮らし始め、2017年7月にイオンタウン株式会社に入社し、地域の商業施設の企画開発に携わってきました。永井さんの自宅と、勤め先が運営するイオンタウン守谷は、目と鼻の先にあります。お子さんを連れて買い物に行くたびに、永井さんの目に留ったのは、イオンタウン守谷の一角にあるヒマラヤ杉公園。それこそが、and PARK Moriya発案のきっかけでした。

「当初、ヒマラヤ杉公園は、あまり手入れがされていなくて、草ぼうぼうの状態でしたが、僕にはお宝のように見えました。もったいないな、何かできるんじゃないかなと思ったのが始まりでした。守谷市は、住みよい街ランキングで1位に選ばれましたが、正直、私にはその実感がありませんでした。建築を学んでいたこともあり、まちづくりには、ずっと興味がありましたが、自らすすんで取り組むということは、まだできていなくて。そこで、誰かに決められた住みよさ日本一ではなく、自分自身が守谷市に住む豊かさを実感できる、そんな暮らしを自分たちの手で創っていくことはできないかと考え始めたんです」

守谷の暮らしをもっと楽しむための「出会いの場」を創る

「新しく守谷市に住む人が、寝るために帰るまちではなく、自ら暮らしを楽しめるまち。このまちにはこんないいものがある、こんな面白い人がいる。そんなことを地域の人々に感じてもらえるような、出会いの場を創ることから始められたらいいなと思い、ヒマラヤ杉公園で定期マーケットを開催するというアイデアにたどり着きました」と永井さんは話します。

思い描いたビジョンをかたちにするべく、一般社団法人P-playersのメンバーに話を持ちかけました。P-playersは、2016年に守谷市で立ち上がった団体で、今ある守谷市の公園や広場などを、より豊かで居心地の良い場所として使いこなすための活動に力を注いでいます。永井さんいわく、4人の初期メンバーは“ベテランの守谷市民”。不動産業を営む人、まちづくりのシンクタンクに勤める人、子育て支援団体で活動する人や地方議員など、ユニークな面々です。永井さんは“新米の守谷市民”として2018年にP-playersに参画し、昨年5月、メンバーたちとの協力のもとにand PARK Moriyaをスタートさせました。

P-playersメンバー
撮影: KIJITORA studio.

「定期的にマーケットを開催することで、その場の価値やまちのポテンシャルのようなものが見えてくると思い、昨年は、隔月第3 土曜で年4回開催しました。P-playersが運営を担い、イオンタウン守谷がバックアップサポートを行うという形を取っています。マーケットの出店者には、かなりこだわっています。当初から、誰でも出店できるという風にはしていなくて、自分たちが素敵だなと思うお店の人に直接会いに行き、口説いてまわりました。会場がそんなに大きくないので、出店舗数は多くても15〜20店。初回は12店が出店し、約1,200人のお客さんが足を運んでくれました」

いつもの暮らしを楽しくするヒト、モノ、コトが 緑豊かな公園に溶け込んだマーケット

「2019カプート杯ナポリピッツァ職人選手権日本大会クラシカ部門」で日本チャンピオンに輝いた、守谷市のピザ屋さん「イル ネッソ ピッツァ ナポレターナ」、つくば市を拠点にガレットとクレーブの移動販売を行う「Champs de blé 」、植物の持つ“本物のチカラ”を大切に、無農薬ハーブ苗、季節の花苗を栽培・販売する花屋さん「Sumireno Tane」など、出店者は実に豪華な顔ぶれです。飲食や物販のほかにも、親子向けの木育ワークショップ、きこり体験など、バラエティ豊かな内容がそろっています。

and PARK Moriyaを開催したことは、永井さんの心境にも大きな変化をもたらしました。

「守谷市の一市民として、このまちがすごく好きになりました。このまちに暮らしていても、つまらないと思っていたのが、すごく面白いと感じるようになったのは、やはり“人”。自分たちでいいなと思うお店の人を見つけ出し、足を運び会いに行ったことが大きかったです。出店者の売り上げは店によってさまざまですし、すべてが大成功というわけではありませんが、イオンタウン守谷にも、『次は、いつやるんですか?』というお客様の声が寄せられたりしたので、期待感のようなものは少し作れたのかなと。ありそうでなかった風景が、日常の中にできてくるのはいいなと思いました」

初回のマーケットには、永井さんの家族も来場しました。無事終えて、ヘトヘトで家に帰ると、当時3歳の息子さんに「パパ、お祭り楽しかったね」と言われて胸がいっぱいになったそうです。

「何かいい場所だと本能的に思ってくれたようで、非常に嬉しかったですね。公共空間の公園をみんなで使ってみたら、来場者も出店者の方も、自身を含むP-playersのメンバーも、みんなが楽しんでいて、どんどん笑顔になっていました。社内でも好評価をいただき、これまで全く通らなかったような提案が、『永井が言っているなら、ちょっと検討してみるか』という風に最近変わってきたところがあります。実践が、会社での立ち位置を少し変えてくれたのかなと感じています」

大切なのは、自分の場所だと思える「関わりしろ」があること

永井さんの根底には、都市経営プロフェッショナルスクールで出会った恩師の「真剣にやれよ!仕事じゃねぇんだぞ!」という言葉が深く刻まれています。

「厳密に言うと、これはタモリさんの言葉だそうですが、心に強く響きました。自らで動くこと。そして、仕事ではあるけれど仕事ではない、ある意味で仕事と遊びをつなげていくような、そういったことに本気で取り組むことはできないかと考えた末に実践したのが、and PARK Moriyaでした」

永井さんにとって、まちづくりの原点である公園。地域の人々が、公共空間のひとつである公園をより楽しむためには、「自分の場所だと思える“関わりしろ”があることが、すごく大事」と言います。

「and PARK Moriyaを開催することになった時、“一緒に公園の草刈りをしようよ”と、近所のパパ友を誘いました。ひと仕事終えたあと、2人でビールを飲んだのですが、イベント当日も来てくれて、楽しんでいってくれました。すごく小さなことですが、そこに自分が関わる余白があるかどうかということが、とても大事だと思います。守谷市には、ヒマラヤ杉公園のほかにも公園が多くありますが、子どもと遊具で遊ぶ程度で、地域の人にとって、自分たちの場所だという風には、まだなりきれていません。芝生をみんなで育てよう、きれいに掃除をしよう、あの公園でこんなことをしてみよう、どんなことでもいい。自分が手を入れたり、新しい使いこなし方をしてみることで、公園との関わり方は大きく変わってくると思います」

ショッピングセンターの空き店舗を活用して地域住民と共に“シェアアトリエ”をスタートさせたり、今年7月にイオンタウン株式会社が基本協定を結んだ、千葉県旭市と官民連携ですすめる地方創生事業など、永井さんのまちづくりの活動は今、大きな広がりを見せています。

「関わることをどうデザインするかということに、興味がある」と言う永井さん。その活動の先には、今よりもっと自ら暮らしを楽しむまち・守谷市が実現していることでしょう。今後の発展に期待が募ります。

永井大輔(ながい だいすけ)
一般社団法人P-players理事
イオンタウン株式会社SC企画部/地域連携まちづくり委員/新世代SC研究会プロジェクトリーダー
特定非営利活動法人 自治経営 関東甲信越アライアンス副代表
1983年 北海道札幌市生まれ/茨城県守谷市在住。2006年、筑波大学工学システム学類を卒業、2011年、首都大学東京建築都市コースを卒業後、株式会社NTTファシリティーズ中央に入社。2017年7月、イオンタウン株式会社に入社し、商業施設の企画開発に従事。2018年10月、都市経営プロフェッショナルスクール公民連携スタートアップコース(1期)修了。2018年11月、一般社団法人P-playersに参画。2019年5月、「“住みよいまち”から“自ら暮らしを楽しむまち”へ」をコンセプトとした定期マーケット「and PARK Moriya」を守谷市で始動。現在、イオンタウン株式会社SC企画部に従事しながら、同社新世代SC研究会プロジェクトリーダー(2019年3月〜)、地域連携まちづくり委員(2020年4月〜)を兼務している。

一般社団法人P-players | https://www.facebook.com/P-players-1187101064669674/
特定非営利活動法人 自治経営 | https://www.jichikeiei.com/
公民連携ケーススタディブックvol.03 | https://jichikeiei.thebase.in/items/28628001
(永井さんが編集班長を務め、and PARK Moriyaについての詳しい内容や、各地の様々な取組みを掲載しています)