季節の小さな楽しみ方
秋を味わう「栗しごと」

秋になると、八百屋やスーパーの店先に栗が並び始めます。
旬の栗を使って、栗ご飯や渋皮煮、甘露煮などを作る「栗しごと」。夏の「梅しごと」と同じように、季節を楽しむ手仕事のひとつです。
日本と栗との関わりは古く、青森県の三内丸山遺跡からも多くの栗が出土しています。当時は周辺に広がる栗林を人々が管理していたと考えられており、直径約1メートルの栗の木柱も発見されています。栗は食料としてだけでなく建物にも使われ、縄文時代から人々の暮らしを支えてきた身近な存在だったようです。
今では、むき栗や下ごしらえされた栗も手軽に買えますが、旬の栗を一つひとつ手に取り、自分で手をかけるのもこの季節ならではの楽しみです。特別な設備がなくてもキッチンで楽しめる栗しごとは、マンション暮らしにも取り入れやすい季節の手仕事。つやのある硬い皮に触れ、ゆで上がった栗の香りを感じ、ほくほくとした実を味わう。栗しごとは、食べるだけでなく、五感を通して秋を感じられる時間でもあります。
生栗を選ぶときは、皮に張りがあり、ずっしりと重みを感じるものを選びましょう。栗は意外と乾燥しやすいため、購入したら早めに楽しむのがおすすめです。
まず気軽に楽しむなら、皮をむく必要がなく、茹でるだけの「ゆで栗」から。半分に切ってスプーンですくえば、栗そのもののおいしさをシンプルに味わえます。時間のある休日には、じっくり渋皮煮や甘露煮に挑戦したり、皮をむいて栗ご飯を炊いたり。手をかけた分だけ、食卓で味わう楽しみも大きくなりそうです。
家族で一緒に取り組めば、「大きい栗があった」「きれいにむけた!」と、何気ない会話が生まれる時間にも。子どもにとっては、スーパーに並ぶ食材が、皮をむき、火を通すなどの手間を経て食卓に並ぶことを知る機会にもなります。旬の食材に触れることは、季節を知る小さな食育にもつながりそうです。
「栗しごと」というと、たくさんの栗を用意して、時間をかけて仕込むイメージがあるかもしれません。でも、最初から大がかりにする必要はありません。スーパーで一袋の栗を買って、できることから始めてみる。それだけでも十分に秋の手仕事です。
栗の皮をむく作業は、決して効率のいいものではありません。一つずつ手に取り、硬い鬼皮をむき、料理によっては渋皮も丁寧に取り除いていく。普段なら少し面倒に感じる作業も、「秋のこの時期だけ」と思うと、不思議と向き合ってみたくなります。便利なものを上手に取り入れながら、ときにはあえて手間をかけてみる。そんな時間も、季節の手仕事の楽しみのひとつなのかもしれません。
一年を通してさまざまな食材が手に入る今でも、生栗が店先に並ぶのは限られた季節です。「今年も栗の季節が来た」と、食材から季節の移ろいに気づく。そんな小さなきっかけが、日々の暮らしに季節のリズムをつくってくれるのかもしれません。
この秋は、旬の栗を手に取って、「栗しごと」を始めてみてはいかがでしょうか。
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