ひとり女性のこだわり

人にはそれぞれにこだわりがあると思いますが、暮らしにおいても同じことが言えます。たとえば食器。色や素材にこだわる人もいますし、同じサイズできれいに重ねられることにこだわる人、重さや持った感触にこだわる人もいますし、ブランドにこだわる人もいます。寝起きに決まったストレッチをしたり、朝コーヒーを必ず豆から挽いて入れるなど、日常のルーティーンにおいてもこだわりが見られます。暮らしのこだわりは、度を越えると窮屈になる側面もありますが、暮らしを楽しくするために、自分で課した自分だけのルールを守るのは心地よいものです。

フージャースには、「デュオヴェール」という単身女性向けの分譲コンパクトマンションのシリーズがあります。できるだけ低価格の1LDKを実現するために、極限まで専有面積を小さくしていますが、狭さを感じさせない空間と機能を備えています。2016年より販売を始め、全国で22棟のコンパクトマンションを供給させていただきましたが、「私たちの企画は暮らしの隅々にまで目を向けられているのだろうか」「暮らしの実態とあっているのだろうか」「アンケートの大多数に目を奪われ、住む方が大事にしている小さなものが見えていないのではないか」「マンションデベロッパーの思い込みによる商品開発をしてしまっているのではないか」と疑問も抱くようになりました。そこでフージャースの若手社員数名が集まって面白いツールを開発しましたので紹介します。

題して「ひとり女性のこだわりカード」。一人暮らしの女性のリアルな暮らしのこだわりや、ルールを本質的に理解するためのコミュニケーションツールです。カードには、実際に一人暮らしをされている女性からヒアリングした「暮らしのこだわり」が、書かれています。「食べる」や「片づける」など、行動別に色分けされていて、書かれている内容が面白いのです。たとえば、「コンロは2口でいい」「ドライヤーは5万円」などと一言だけ書かれています。一言しか書かれていないのにそのカードを見ると、「どんな料理を作るのだろう？」「他にも美容は何をこだわっているのかな？」など、いろいろ聞きたくなります。そして、私は・・、と自分のこだわりも話したくなるから不思議です。若手社員たちはその心理を利用して、一枚のカードに書かれている、ある人のこだわりをきっかけに他の人のこだわりを聞き出し、深掘りしようとしていました。

先日、一人暮らしの女性数名と、このカードを使って座談会を開催しました。テーブルに並べられた多数のカードから、気になるものを1人5枚ずつピックアップしていただき、発表していきます。すると不思議なことに初めてお会いした方ばかりなのにも関わらず、一枚のカードから話が弾み、自分の暮らしのこだわりやルールを笑顔でお話されてました。
例えば「私は、食材は食べる分しか買わないんですよ」、「食器は作品なので作者で集めています」、「何もない休みは昼からお風呂に二時間はいります」、「部屋を広く使いたいからストックはしないんです」など、数枚のカードからどんどん話が広がっていきました。想像以上に他人のこだわりを聞くことは楽しく、座談会後もご参加いただいた皆様から「話し足りないね。もっと聞きたいし話したい。次も参加したいです。」とお声をいただきました。

このカードは新しい間取りを考えるときにも利用しています。「このこだわりを持っている人は、もっとこう使うのでは？」と、誰かのこだわりを起点にもう一段深く、使う側から考えることができるようになりました。「トイレットペーパーは12ロール」のこだわりカードから、予備の12ロールがぴったり収納できるようにサイズを変更してみたり。最大公約数の意見ではなく、おそらく女性はこうであろうという思い込みではない、「リアルでニッチなこだわり」にピントを合わせることで、もっと住む人に近い感覚でマンションをつくっていけるようになりました。

他人の暮らしのこだわりを知ることは、そうですよね！と深く共感できるものから、え？そんなことを、と理解できないものまで、いろいろな発見があります。そこには、住宅の作り手として考える理想の暮らしとは異なるリアルな暮らしが見えてきます。暮らしを楽しくするための、その人のルールが見えてきます。

フージャースではこのカードを使って、ひとり暮らしの女性と意見交換を繰り返していきながら、こだわりカードを増やしていきます。人それぞれの暮らしのこだわりを知り、暮らしの解像度をあげて、これからもデュオヴェールの商品企画に取り組んでいきたいと思います。

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