地域通貨とコミュニティ

―稼ぐ人から払う人へ

photo: Miki Chishaki

地域通貨をご存知でしょうか。最近、地域創生などの文脈で、この言葉を聞く様になりました。コミュニティについて考えるとき、この地域通貨のことを考えると、多くの示唆を与えてくれます。
日本にはすでに600以上の地域通貨が、発行されているといわれます。地域通貨とは、ある特定のコミュニティの中だけで発行する通貨です。法定通貨の代わりに、その地域通貨でものの売り買いや、サービスの交換ができます。地域通貨の種類は3種類、手帳型と手形型そして紙幣型です。
手帳型はそれぞれ共通のノートを持っていて、渡した人・もらった人がそれぞれのノートに書き込みサインをします。手形型は、手渡す紙幣の裏側に名前を書き込み、そのお金が誰から誰へと渡ってきたかが可視化されています。そして紙幣型は法定通貨と同じ様に、一定方向に渡していくものです。商店街などで使える買い物券はこの種類です。これらの地域通貨の特徴は利息がなく、コミュニティ内の地域通貨の取引量の総和が、±0になるということです。
実はこのことは、法定通貨と大きく違う点です。総和がゼロということは、いくらマイナスになってもコミュニティ内では破綻することがありません。それゆえ、お金を持っていることより、仕事を依頼する人がコミュニティ内のキーマンになっていくのです。依頼すればその人の資産は減りますが、周囲の人の収入へと繋がるのです。お金は人と人の関係性を作れるツールです。できることを探して、仕事として依頼をするのです。こういう人の価値を発見していく人がコミュニティ内では重要です。
このことは、今までの法定通貨で行われてきた取引の価値観とは、まったく違います。
一回の取引が大きいことより、取引の数を増やすことのほうが、多くの人の豊かさにつながっていくのです。効率性の追求とは全く逆になります。反対に関わりの数は、関わりの強さになっていきます。少しお節介ぐらいの人が、コミュニティには必要です。時間をかけて、あえて面倒なことや、小さなことを数多くする。そうしたことが周りの人を豊かにするのです。このようにコミュニティ通貨は、今までの価値観とは違う人が、重要な役割を持つ社会のあり方を示唆しています。こうした経済圏を、「共有経済圏」と呼ぶ人もいます。応援したり、交換したり、贈与をしたりする経済圏です。奪うことから与える経済圏ともいえそうです。
またコミュニティの暮らしにおいては音楽家、芸術家、学者や旅人のように、人を楽しませる仕事も欠かせません。生産性を追求するのでなく、人の感情や喜びを表現していくのです。他にも日常の暮らしの道具を作る陶芸家や家具職人なども、暮らしの質をあげるためには重要です。さらに知識をもっている学者や、外の情報をよく知って伝えてくれる旅人も重要です。新しい知識を持っている人、自分たちが知らないことを知っている人などです。このように人に何かを与える人が大切になっていくのです。

こうした動きは、我々のこれからの社会のあり方について、また価値観について考えさせられる話です。企業においても、今までは成果を達成する人が注目を浴びていましたが、今後はそうした人をサポートする人の方に、多くの人気が生まれるのかもしれません。少なくても地域コミュニティ内の人と人の関係性は、変わりつつあるように思います。

いかがでしょうか。最近の社会の変化。意識の変化。みなさんは何か感じることはありますか。ご意見お寄せください。

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