教育移住に関する座談会を終えて

YUMIK / PIXTA(ピクスタ)

フージャースでは、事業を通して社会課題・地域課題の解決に貢献していく存在の「ソーシャルデベロッパー」を目指し、「U35ソーシャル推進プロジェクト」を立ち上げました。詳しくは「U35 ソーシャル推進プロジェクト」社会課題・地域課題の解決に貢献していく存在へ(2023年7月14日掲載)で、紹介しています。
その中の子どもの教育と移住について研究しているチームでは、「教育移住」のための新たな住まいの提供を検討しています。
全国には、インターナショナルスクール※1やオルタナティブスクール※2などの、一条校※3以外の学校が増えており、「教育移住」の事例も増えてきていますが、家族揃っての地方への移住はハードルが高いのが現実です。
これらの学校情報のアンケートにて説明しながら、将来子どもを持ちたいと思っているご家庭、中学生以下の子どもがいるご家庭の方に、子どもの教育や教育移住に関してお考えを伺いました。アンケートの結果は、欲しかった暮らしラボにて「【結果】子どもの教育に関するアンケート」(2023年10月6日掲載)で報告しています。  

インターナショナルスクールやオルタナティブスクールに興味がある・入学させたいと考える人は一定数いるものの、金銭面や移住へのハードルが高いようです。
これらの結果を踏まえて、9月27日から計3回にわたって行った「教育移住に関する座談会」の内容を紹介します。 

※1 インターナショナルスクール
主に外国人年少者を対象にその所在する国や地域の教育システムに基づいて就学前・初等・中等教育を施す学校のこと。異文化体験や国際的に通じる歴史取得の機会として選択されることもある。

※2 オルタナティブスクール
ヨーロッパやアメリカの哲学的思想を基盤に発展した「オルタナティブ(alternative)」とは「もう一つの」という意味で、公立でも私立でもない「もう一つの」学校とされている。

※3 一条校
教育法第1条に定められた学校の種類のこと。小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、大学、高等専門学校、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園の10校を指し、いわゆる一般的に「学校」と称されるものが該当する。

 

座談会の目的
インターナショナルスクールやオルタナティブスクールなど一条校以外の学校が増えてきており、子どものためにより良い教育環境が整った地域に移住する「教育移住」の事例が近年増えてきている。しかし、金銭面や移住に対する不安からまだまだ教育移住へのハードルは高い。 

そのような現実や不安を解消できる新たな住まいを提供できないか検討するにあたり、子どもがいる方の教育や教育移住に対するご意見を伺いたい。 

実施日
2023年9月27日(水)、29日(金) 

参加者
30代〜50代の男女、計5名の方にお話を伺いました。 

 

結果の要約 

今回の座談会に参加されたのは、お子さんが公立の学校に通っている、または通う予定という方々でした。学校選びの基準は、特に小学校は住まいからの距離が決め手、あるいはそれしか選択肢がなかったという方もいました。それに加えて治安や評判などを判断基準とされた方もいらっしゃいます。 

インターナショナルスクールやオルタナティブスクールを知ったきっかけは、テレビやSNS、知人から聞いて、といった回答がありました。
特にオルタナティブスクールに関心を持たれる方が多かったようです。今の学校に不満を感じられている方は近くにあれば通いたいと思う一方、現状公立で困っていることがなければあえて通う選択肢はないようでした。
インターナショナルスクールに対しては、それぞれの語学学習に対する考え方の違いで意見が割れ、「習い事で補えればいい」「日本語の習得が疎かになるのではないか」という意見もあれば、「小さい頃から語学を学べるに越したことはない」と考える方もいらっしゃいました。
ほとんどの方がどちらの学校もお金がかかるというイメージをお持ちでした。 

教育移住する場合に不安なことには、仕事と金銭面、環境の変化が挙がっています。リモートワークができない職種の方が多かったので、教育移住をするとなると辞めることを考えなければなりません。そうなるとますます金銭面の不安も大きくなります。
環境の変化に対しては、お試しで短期間の移住ができたらと良いという意見もありました。
また、自分達の将来をネックに感じる意見も多く挙がっています。子どもが学校を卒業したあとの進学先はどうなるのか、子どもが卒業した後も自分達はそこで暮らすのか、長期的な視点で考えた時の不安も移住をためらう要因となっています。 

現在の教育費や住宅費、移住にかけられる金額は各ご家庭により様々でしたが、子どもが何かしら習い事をしている家庭がほとんどでした。移住にかけられる金額として具体的に出た金額は、中古を買ってリフォームする前提で1000万円くらいという方から、子どものためなら3,000万円以上出せるという方までいます。 

移住先の理想の住まいには、暮らしやすさや管理のしやすさから、5人中3人が戸建てよりマンションが良いと回答されています。戸建を選択した方でも、同じく生活のしやすさから平家がいいと答える方がいました。 

 

 座談会を終えて 

今回インターナショナルスクールやオルタナティブスクールに通うこと、移住することのハードルの高さを改めて感じました。
皆さんそういった学校に多少なりとも関心は持たれるものの、既に小学校に通われている方が多かったこともあって、今からあえて別の学校に通う想像はしにくいようでした。
もう少し子どもが小さい頃にそういう学校の情報が入っていれば、考えが変わる可能性もあるのではないかと思いました。 

移住についてはやはり経済面がネックとなっていたほか、子どもの進学先や教育を終えた後の自分たちの暮らしを懸念される方が多くいらっしゃいました。兄弟のいるご家庭はさらにその兄弟の教育まで考えないといけません。一つ学校があるだけでは移住は考えにくく、その先も安心できるような環境が必要そうです。
住まいについて学校側とも連携して準備をすることが理想かもしれません。移住先の生活を考えると住まいや学校を超えて、その地の行政の支援の充実であったり、同じ年齢の子が集まる場であったり、子育て世代に優しい環境作りや仕組みづくりが、移住の不安を軽減するものとして求められそうです。 

住まいそのものについては、暮らしやすさがキーワードとなりそうです。その上でなるべく経済面での負担が増えないような住まいを、分譲と賃貸と両方の軸で検討を進めたいと考えています。
今はまだ馴染みがないインターナショナルスクールやオルタナティブスクールが、もっと身近な選択肢になるよう、住まいづくりから考えていきたいと思います。