このお店だから出会える本を。店主の好きとこだわりが詰まった書店

【岡山 文学とまち インタビュー vol.3】「451ブックス」 根木慶太郎さん

桃太郎伝説発祥の地として知られ、多くの文学者ともゆかりのある文学のまちである岡山。
そんな岡山県の玉野市にある「451ブックス」は、店主の根木さんが1冊1冊選んだ本が並ぶ、独立系書店です。玉野市や岡山市からはもちろん、岡山県内外の多くの本好きが訪れます。本離れが進み、書店が少なくなっている今の時代、なぜ人々は「451ブックス」を訪れるのでしょうか。その理由を伺いました。

 

瀬戸内海沿いにたたずむ、個性的な書店

岡山市から車を走らせること30分。瀬戸内海沿いの落ち着いた住宅街を進んでいくと見えてくる、鮮やかなネイビーの外壁とアーチ状の屋根の建物が、「451ブックス」です。

お店の正面扉を開けて中に入ると、まず目の前にレジスペース、レジ横には二階に続く螺旋階段が現れます。店内は吹き抜けになっており、壁には二階の高さまでびっしりと本が並べられ、まるで違う世界に迷い込んでしまったかのような感覚を覚えます。

 

なんと、この店舗は、店主の根木慶太郎さんご自身で設計されたとのこと。根木さんは、もともと設計のお仕事をされていましたが、「自分の好きな仕事をしたい!」と一念発起し、2005年に「451ブックス」を開業しました。
幼いころから本が大好きで、小学生のころから月に1度は必ずお小遣いで本を買い、図書館にも欠かさず通い、さらには図書館係を務めるなど、まさに本の虫。ご本人も「活字中毒だった」と笑いながら話します。

本への情熱は、大人になってからも健在で、様々なジャンルの本を読み漁っていたそうです。幼いころはロボットやロケットに向いていた知的好奇心は、大人になるにつれどんどん広がっていき、小説はもちろん、こども向けの絵本から社会学の本まで、多岐にわたるようになりました。ネット通販が普及する前は、日本で手に入らない洋書を、現地の出版社に直接はがきを送って発注するほどだったそう。「451ブックス」は、そんな根木さんの本に対する愛と知的好奇心、そして強いこだわりが詰まったお店です。

 

店主のこだわりが詰まる書店

この書店が一般的な書店と少し違う点は、販売している本のラインナップにあります。一般的な新刊書店の本の流通には、出版社と書店をつなぐ「取次業者」が関わっていて、取次業者の配本システムに基づいて、各書店に本が行きわたるため、書店によっては本のラインナップが共通しています。一方、ここでは、店内に所狭しと並ぶ本すべてを、根木さんご自身が直接選んでいます。ご本人ができる限り目を通すようにし、そうでない本についても大体の内容は把握しているため、どの本についてもお客さまに紹介できるそうです。絵本・小説・建築・料理・社会学・リトルプレス・ZINEなど、根木さんの好みのジャンルを中心に、国内外から、大小問わず様々な出版社の本を取り扱っています。ご自身の好きなジャンルの本だからこそ、本気でおすすめができるのです。根木さん選りすぐりの本を、根木さんとお話する中で選びたいという思いで来店される方も少なくありません。

 

店主の想いが詰まった一冊との出会い

大人向けに絵本を紹介したり解説したりする「大人のための絵本講座」を実施しています。この絵本講座では、多くの人が想像するような子ども向けの読み聞かせは行いません。絵本に隠されたメッセージはもちろん、作家の生涯や時代背景までなぞることで、より深い絵本の世界に出会うことができます。そんな根木さんの強いこだわりに惹かれ、絵本を目当てに子どもを連れてお店を訪れる方も多いそうです。

「お店に入ってすぐのところにレジがあるのは、本を選んだ僕の顔がすぐ見えるようにするためです。普通、どの書店もレジは奥にあると思うんだけれど」
欲しいと思っている本を買うだけなら、ネット通販や大型書店などで手軽に購入することができる今の時代。だからこそ根木さんは、「うちの店には、目的を決めず、なんとなく、来てほしい」と言います。
根木さんが一冊一冊に目を通し、ご自分の感覚で選び抜いた本が並ぶこの店には、店主の想いや温度まで感じられるような、本との出会いがあります。

また、根木さんは、岡山最大の文学イベントである、「おかやま文学フェスティバル」の中心人物でもあります。開催回数を重ねていく中で、着実に一部の本好きのみならず、文学の輪が広がってきている実感があると、根木さんは話します。
「本を読む人も、書く人も、図書館の人も、出版社の人も本が好きであれば立場は関係ないですから。垣根なく、いろんな本の楽しみ方がに、広がっていくといいなと思いますね」
玉野市のお店にとどまらず、岡山全体、そして全国へ。根木さんの純粋な本への愛と好奇心が広がっていることを、強く感じた取材となりました。

 

根木 慶太郎

1960年岡山市生まれ。広島工業大学建築学科卒業後、住宅会社に勤務。その後専門学校にて建築やCGなどの教鞭をとる。2005年玉野市に「451ブックス」を開店。新刊書籍、古書、洋書、ZINEなど自らセレクトした本を販売。旅する本屋としてBOOK VANにて各地イベントに出店。「大人のための絵本講座」や「本を読む、考える」などの教室も開催。「おかやま文学フェスティバル」を岡山市と主催する「おかやま文学フェスティバル実行委員会」代表を務めている。

【おすすめの本】
『だれでも知っている あの有名な ももたろう』。きびだんごのパッケージでも有名な五味太郎さんの桃太郎ですが、その絵本には意外な結末が・・・。知っていると思っていても知らないこと。大事なことが描かれています。

451ブックス
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