人の役に立ち、人を育て、人が活躍できる場をつくるということ

【公園のある暮らしインタビュー vol.1】パン工房「クーロンヌ」

つくば市で大人気のパン屋さん、「クーロンヌ」。そのクーロンヌが、今年11月、緑豊かなつくば市の中心地である竹園西広場公園に隣接したフージャースが開発するマンションの敷地内にベーカリーカフェをオープンします。地域の人々から愛され必要とされる「店づくり」「人づくり」「パンづくり」に力を注いできたクーロンヌ。地域の人々から愛され続ける理由とは何なのか——その魅力を探るべく、田島浩太さん(クーロンヌジャポン代表)にお話を伺いました。

すべては、目の前にいる誰かのために

クーロンヌが誕生して、今年で26年。フランスパン専用のオリジナル小麦粉を製粉会社と共同開発するなど、素材にこだわり、素材を活かし十分に熟成させ、余計なものは入れずに毎日食べて安心安全なパンを地域の人々に届けてきました。現在は、茨城県南地域を中心に、千葉県、栃木県で12店舗を展開し、クーロンヌのパンは多くの人に愛され続けています。

田島さんが、美味しいパンづくりを追求することと同様に、クーロンヌを立ち上げた頃から大切にしてきたことがあります。ひとつは、「目の前のことに集中し、目の前にいる人の役に立ち、喜んでもらうこと」。もうひとつは、「人を育てる場、人が活躍できる場を作ること」です。

「仕事を通して、目の前にいる人の役に立ち、喜んでもらうことが自分のモチベーションになれば、有意義で楽しく、生きがいを感じながら、毎日の仕事を続けることができます。私にとって目の前にいる人とは、お客様であり、共に働くスタッフたちです。“時間を作って、クーロンヌに買い物に来て良かった”とお客様に思ってもらうためには、何が必要か。“クーロンヌに入社して良かった”とスタッフに思ってもらえる環境を作るには、どうすればいいか。そうしたことを一つずつしっかりと考えながら、人々のお役に立てることをやっていく。それが私の使命です」

人の喜ぶ顔、人の成長が、何よりの生きがい

クーロンヌでは、「仕事を通して、自分の存在価値を高めたい」と高い志を持つ若者が多く働いています。希望者には、パン作りの技術に関する勉強会や講習会に加え、仕事に対する意識や人生設計について勉強する場を設けるなど、成長意識や目的のある人にとっては、自分を磨くことができる環境が備わっています。

「どんな仕事でもそうだと思いますが、一生懸命に頑張って、実力もついてきたのに、活躍できる場がないと、モチベーションも下がりますよね。その逆に、学ぶ場があって、活躍できる場があって、評価される場があれば、人は生きがいを感じながら、成長していくことができると思います。成長したスタッフが活躍する場としては、やはり“店舗=パン屋”が必要です。店舗数は増えましたが、店舗を増やそうという計画や目標は、そもそもないというのが実情です。地域のお客様のお役に立つためのパン屋、スタッフが活躍できる場としてのパン屋づくりに力を注いできた結果としての今があります」

「感謝を形で届けられる日本一!」「笑顔・元気日本一!」というように、スタッフ各自が、「自分は何をもって、日本一になりたいか」を宣言するという、ユニークな目標設定を行っているのも、クーロンヌならでは。「自分がどんな人間になりたいかというイメージを描くことは、モチベーションを維持・向上するうえでも、大事なこと」だと田島さんは言います。この目標設定は、例えば、誰かと出会ったり、本を読んだりして感銘を受けた時など、個々の心情や状況の変化に応じて、いつでも変更が可能なのだそうです。

地域の生活に溶け込む「商店街のパン屋」であり続けたい

田島さんがパン職人としてスタートしたのは、18歳の時。それ以降、パンづくり一筋で生きてきた人生を振り返って、こんな風に話してくれました。

「今まで試行錯誤しながら、色んな選択や決断をしてきました。とはいえ、我慢して、苦労して、歯を食いしばって頑張るというようなことはなかったのですが、50歳を超えた今、“パン屋になって、本当に良かった”と、つくづく感じるようになりました。たくさんの素晴らしい“巡り合い”に恵まれてきたと思います」

前述のように、今年11月、緑豊かなつくば市の中心地である竹園西広場公園に隣接したフージャースが開発するマンションの敷地内にベーカリーカフェをオープンします。―この開発は、つくば市と連携して全国でも珍しい、民間の敷地と公園の境界をなくして、カフェを公園に開いて作ることが実現しました。

「独立した当初から、公園の前にパン屋を開きたいと思っていました。でも、そうした物件は、そうあるものではありません。地域の人が暮らす住居があって、パン屋があって、目の前には公園がある。こんな展開は初めてで、すごく楽しみにしています。これまでの経験を活かして、地域の人に喜ばれる空間を作っていきたいです」

「人を介したコミュニケーションが薄れがちな時代だからこそ、個人商店であり続けたい。商店街のパン屋のように、地域の人々の生活に溶け込むような、温かい場を作っていきたい」と田島さんが言うように、公園に隣接するベーカリーカフェは、人と人、人とまちをつなぐ、つくば市の新たな地域交流の場になることでしょう。

田島 浩太(たじま こうた)
高校卒業後、大手リテイルベーカリーでパン職人として働いたのち、1994年10月、26歳で株式会社クーロンヌジャポン設立。1995年、「クーロンヌとりで」(本店)開店。1999年、「クーロンヌもりや」、2003年、「クーロンヌつくば」、2005年、「クーロンヌかしわ」を開店。2008年には、「クーロンヌつくばカスミ」「クーロンヌ龍ヶ崎たつのこ山」「ピッツェリアTatsunoko」を開店。現在、茨城県南地域を中心に、千葉県、栃木県で12店舗を展開している。

パン工房 クーロンヌ | https://www.couronne.co.jp/