旅が暮らしを変える

Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

一昔前までは、旅というと「非日常」を求めて宿泊先を決めていました。しかし、最近その流れが変わってきたようです。もちろん今でも多くの人は「非日常」を求めて旅をするほうが普通です。しかし、ここ数年のホステル、民泊などの新しい宿泊のムーブメントは、その旅とはちがう新たな暮らし方への潮流からきているように思います。

旅と日常の境界線

この新たな潮流を一言で言うと、旅という非日常を、あえて日常に組み込んでいくという行為です。その背景として、会社で仕事をするという場所の概念や、平日=仕事、休日=休みという曜日の概念が変化しつつあるのも理由のひとつでしょう。旅先でも仕事をする人が増えてきました。また休日に、自分がやってみたいプロジェクトのために手を動かしてみたり、地方のNPOで活動してみたりと、いくつかの仕事を同時にする人などの話もよく聞きます。
自分がやりたいことや、表現することが仕事になりやすい時代に突入し、平日と休日の境目があいまいになることで、自分のパフォーマンスを最大化してくれる環境や、曜日に囚われずに移動するという風に、ハードもソフトも含めて、自分の居心地のいい環境を暮らしのなかで選び続けたいという思いが、今のホステルムーブメントの原点にあるように思います。その結果、ひとつの場所に長くいることや、毎週のように出かけて、その地域に関わり続けるということが起きています。

境界線を越える新たなサービス

これまでのホテルは、1泊単位ですし、自分の持ち物を置いておくことができません。そのため旅を日常の延長線におくことは困難でした。しかし、サブスクリプション型の宿泊サービスが、旅の在り方を大きく変えています。
このところ、もっとも注目を集めているのはADDressというサービスです。月額4万円の定額制で、全国各地のリノベ物件やホステル、旅館に宿泊でき、全国規模での多拠点生活を実現できます。「家守(やもり)」という、エリアのコーディネーターによって地域の人と交流がもてる点も人気のポイントです。このADDressを世界規模の多拠点サービスにしたのがHafH(ハフ)です。
また、旅先で日常を実感するには、その場所での日常の体験も大事な要素です。地元の人が行く市場で食材を買って自分で料理をする、地元の人が行く食堂にいってみる、銭湯に行ってみるといった具合です。ここにも、新たなサービスが生まれています。例えば、料理をふるまいたい人と食べたい人をマッチングするキッチハイクや、旅先で地元のホストが企画する体験ツアーに気軽に参加できるTABICA、地元の人の家に宿泊できるairbnbといったサービスです。
ホステルに併設されているバーやカフェを利用するのも、方法の一つです。多くの場合ホステルが街の入り口となって、街の人と旅行者をつないでくれる仕掛けが用意されています。こうして旅行者は街のことに関わるきっかけがうまれてきますし、一方街の人は旅行者によって新たな価値観に出会い、視野を広げ、自分たちの街の魅力をあらためて知ることにもなります。

これまでは非日常だった旅が、働き方やサービスの変化で、日常との境界線が曖昧になってきたのです。

曖昧さの魅力

この境界線が曖昧になってくることが、多くの人に刺激を作り出します。あくまでも非日常の中に、日常を組み込んでみる行為なので、非日常が本当に日常になるわけではありません。しかしこの時、人々の様々な意識が覚醒します。人との関わりのぬくもりに感動したり、普段忘れている本来の自分の姿などに触れていくことができるのです。
ホテルや観光サービスの進化は、我々の暮らしの変化をリードしている気がします。旅によって暮らしの視点を少し変えてみる。しかも、今まで経験したことのない旅によって、意識の変化に火をつけていく。あなたはどのように思いますか。

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