日常の見直し バルコニーを考える

Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

「バルコニスト」*という言葉を聞いたことがありますか。
「バルコニスト」とは、イケア・ジャパン(株)が、ベランダ/バルコニー**を楽しんでいる人を「バルコニスト」と定義したものです。この言葉を生むきっかけとなったのは、同社が2016年4月に実施した「ベランダ/バルコニー利用に関する意識調査」でした。

このアンケートの結果によると、バルコニスト(バルコニーが好きだと答えた人)は回答者のうち31.1%いました。また、バルコニストは、非バルコニストの3.6倍である年間約100時間をバルコニーで過ごしている事が明らかになったそうです。
バルコニストの中でも特にベランダ/バルコニーに満足している人の活用法を聞いたところ、1位は「ガーデニング」(68.2%)、2位は「洗濯ものを干す」(65.8%)、3位は「ドリンクや食事を楽しむ」(39.0%)という結果になりました。使い方の満足度が高いバルコニストほど、ベランダ/バルコニーを余暇で利用している傾向にあるようで、ベランダ/バルコニーでの過ごし方の充実が、日々の生活にも良い影響を与えている可能性がありそうです。

前述のイケアの調査にもあるように、日本でのバルコニーの活用は「洗濯ものを干す」が主流です。しかし欧米では、そもそも洗濯物をバルコニーに干す習慣がありません。アメリカでは、外には干さず乾燥機を使用していますし、イギリスでは、気候の影響で家の中に干しても簡単に乾くため、外に干すことはありません。ドイツでは、景観を損なう理由から洗濯物をバルコニーで干すことが禁止されており、代わりに花を飾るルールがあります(干す高さやバルコニーの向きによっては屋外干しが許可されることもあるそうです)。このような背景から、欧米ではベランダやバルコニーを第2のリビングとして自由に利用している例も多くあります。
ブルガリアでは「チャルダック」といってバルコニーの一角に、オーブンや電気コンロなどの調理設備が置かれている空間があります。家事やちょっとした作業、食事などオールマイティーに使われ、日本の土間や縁側にも似た雰囲気を持つ空間です。近代的な集合住宅にもチャルダック風のバルコニーがあり、家族の団らんの場所としてバルコニーが機能しています。

コロナ禍ということもあり、今年は特にバルコニーを活用した人も多かったのではないでしょうか。ガーデニングや、水遊び、ヨガなどの軽い運動、食事、DIYなどといった活用や工夫を紹介したSNSの投稿もよく見かけました。子どもにとっては絶好の遊びの場であり、大人にとっては一人でゆっくりできる場として活躍したようです。
先日、欲しかった暮らしラボで実施したアンケート「日常の変化について」の調査では、「洗濯を干す」以外の目的で、バルコニーの利用をしているという人は約30%いました。今までは「洗濯物を干す」事がメインの場所でしたが、新型コロナウイルスを機に、狭いスペースでも、工夫次第でガーデニングや、食事の場といった、新しい使い方ができることが分かり、緊急事態宣言があけた今もこういった使い方を継続している人が増えていることが見えてきました。
また、このアンケートから、コロナ禍での外出に対して「抵抗がある」と回答した人が56.7%いました。そして、仕事とプライベートの切り替えに困っている人も45.9%いました。
太陽光には「ビタミンD」といって免疫力を高めたり、血液の巡りを良くしたり、ストレスの軽減につながる効果があります。在宅ワークが進み、家で過ごす時間が長くなったからこそ、バルコニーの活用は、絶好の問題解決の場所となりそうです。

家の中にありながらも、なかなか使うことがなかったバルコニーですが、新型コロナウイルスの影響で活用されつつあることがわかりました。
その理由を考えてみると、一つは家族が同じ空間に集まって作業をする機会が増えたことで、一人になれる空間が必要になったことや、外出自粛によって子どもの遊び場を家の中に作る必要が生まれたことがあげられます。そして二つ目に、バルコニーに出ることで、太陽の光を浴びたり、新鮮な空気を吸うことでリフレッシュできるという、バルコニーが元々もっている機能が注目されたことがあげられると思います。この2つの機運の重なりは、今後のバルコニストブームのきっかけになるかもしれません。
バルコニーという限られたスペースではありますが、緑を配置して視覚を演出したり、床材を変えて雰囲気をつくったり、アウトドア用の折りたためる家具で可動性を高めたりと、家の延長として、家族や自分だけの居場所として、バルコニーは楽しく使うことができそうです。ただし、マンションのバルコニーは、共用部にあたります。非常時の避難を妨げないことや、管理規約もありますので、共同生活のルールを守りながら楽しむことが大切です。
これから季節は冬へと移り変わります。バルコニーに出ても寒くないようにテントを広げてみたり、湯たんぽやひざ掛けを用意したり、ひと工夫が必要になりそうです。また、住宅の作り手としては、バルコニーと室内の間にサンルームのような半屋外空間のある住宅を企画してみたいと考えました。
季節の移り変わりを感じながら、リフレッシュや遊び、団らんの場として、まだまだバルコニーの新しい活用の仕方がありそうです。皆様のバルコニーの使い方も、ぜひ欲しかった暮らしラボまで教えてください。

*バルコニスト
2016年4月に行われた、イケア・ジャパン(株)の「ベランダ/バルコニー利用に関する意識調査」において、ベランダ/バルコニーで過ごす事が好きだと回答し、ベランダ/バルコニーの使用用途を「ガーデニング/読書・音楽を聴く/プールを置く/ドリンクや食事を楽しむ/ペットと過ごす/子どもと遊ぶ/会話を楽しむ」のいずれか(余暇目的での利用)を選択した人をバルコニストと定義。

**ベランダとバルコニーの違い
ベランダ: 2階以上にあり、住戸から外に張り出していてある程度の雨風をしのげる屋根のあるスペース。
バルコニー: ベランダと同様のスペースですが、大きく異なるのは屋根がないこと。マンションでは、バルコニーと表示している事が多い。
参考資料
バルコニスト|https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000088.000006550.html
チャルダック| http://www.asahi.com/housing/world/TKY200804300199.html

ミニアンケート

バルコニーを、洗濯物を干す以外の利用をしていますか。

お答えいただくとこれまでの結果が表示されます。

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