「緑と暮らすアパートメント」

Xeno / PIXTA(ピクスタ)

私たちフージャースでは、この半年間、「緑のある暮らし」をテーマに研究してきました。
昨今の新型コロナウイルスによる生活様式の変化や戦争、環境問題の深刻化といった問題により、経済成長の連続を追い求めてきた現代社会において、私たちにとって一番の幸せは金銭的な豊かさではなくて、一人ひとりの心の豊かさであると改めて気づかされました。
人は言葉のない時代から、他者を思いやり、自然に敬意を払って暮らしてきたといわれています。自然の中で五感を研ぎ澄ませ、相手を感じることが、その時代の人の心の豊かさを作り出していたのだと思います。このような背景から、現代における心の豊かさを育てるためのヒントが植物にあると考え、私たちは「緑のある暮らし」をテーマに研究を開始しました。
今回は、取材やアンケート、座談会を通して考えた「緑と暮らすアパートメント」をご紹介したいと思います。

前回までの提案では、人は緑にふれると癒しを感じることから、日常的に緑に触れ合うことができるように専有部を中心に間取りを3案提案してきました。それが、緑を育て飾るスペースを最大にした「圧倒的な緑に包まれる暮らし」(2022年12月23日掲載)、育てた野菜をすぐに調理できる「食べる緑のある暮らし」「湯船から緑を望む暮らし」(2023年1月20日掲載)です。

今回は「緑と暮らすアパートメント」にどれだけの方が興味を持ってくださるのかのトライアルとして、まずは賃貸住宅を考えました。賃貸で土地が狭い中でもより多くの緑と触れ合えるように、専有部にたくさんの緑を取り入れるだけでなく、その考え方を少し拡張して、住宅を作ることを通して、共用部や専有部でも緑を育てる。都市の中に緑を作り、その中に住むことをテーマにしています。

今回は以前ラボのコラム「外部廊下に緑が溢れる家」(2023年1月13日掲載)で提案した西側から入れる住宅と同じように、建物のバルコニーを東向きにして、住戸の玄関には西側から入れるように計画しました。

外観は、森のように圧倒的な緑が建物全体を覆っています。
各階の壁面にはフレームを設けて、植物が成長することで、徐々に壁面緑化が完成するようにしました。一年を通して緑が楽しめる、アイビーやムベといった植物が蔦をはわせます。
またバルコニーには、各住戸の間に木を植えました。これは住宅全体に緑を増やすことはもちろんですが、低層階だけでなく、上層階の人にも積極的に暮らしの中に自然を取り込むことができるように、と考えたためです。上の階に枝葉を伸ばしたときには上の階の住人が剪定をして、落ち葉の掃除は低層階の人がしてということもあるかもしれませんが、上下階で1本の木を大切に育てることで、植物を通して住人同士のゆるやかな繋がりにもつながってきます。
また屋上緑化を施し、建物全体で森のような雰囲気を作り出しています。

エントランスから進んで、エレベータの脇にはテーブルと椅子を設けて、緑を楽しみながら会話をしたり、少し休憩できる場所をつくりました。テレワークの合間や、買い物から帰ってきたタイミングなど、様々なシーンで使えそうです。

次は専有部です。今回は賃貸住宅を前提としているので、一部屋44平米と比較的小さな間取りを想定しました。
まず共用部の廊下には、半外部の庭を作っています。これも以前のコラム「外部廊下に緑が溢れる家」(2023年1月13日掲載)で紹介したアイデアです。専有部の特徴は住戸の西側3分の2を土間にして、そこにワークスペースとキッチンを設け、土間を緑で溢れる空間に仕上げました。こうすることで、玄関からリビングまでを一体として使うことができ、空間としての広がりを感じられたり、植物や家具を自由に置くことができます。
また土間にしているので、床が汚れても気にならず、葉っぱが落ちやすい枝物の鉢が置けたり、植物の手入れをすることができます。家に帰ってきて、大きな鉢植えや背の高い木々が出迎えてくれるというのは、どうでしょうか。

今回の間取りは、これまで考えてきた、「圧倒的な緑に包まれる暮らし」、「食べる緑のある暮らし」、「湯船から緑を眺める暮らし」などの間取りの延長線上に、共有部の緑についてモデルを考えてみました。平米数を広くすれば、コンサバトリールームを取り入れることもできますし、まだまだバリエーションはありそうです。

 

今回は、これまでとは異なり賃貸マンションを想定してみました。まずは、私たちの暮らしに圧倒的に緑を増やすために、専有部で暮らしの中に緑を作り、緑の中で暮らすことを考えました。また、その考え方を少し拡張して、住宅を作ることを通して、共用部や専有部でも緑を育てる。都市の中に緑を作り、その中に住むことをテーマにしています。
人は緑に触れると癒しを感じます。その実現のために日常的に緑に触れる量を圧倒的に増やすには、どうすればいいか。その答えが、専有部に止まらず共用部にも緑を増やしていくという、今回の提案に繋がりました。緑を増やすことは、景観の美しさや家に帰ったときの癒し、人の繋がりを作る他にも、微気候など自然の力で室内を快適にする効果もあります。この住宅に住む人やそれに限らず、周囲の人にも良い影響を与えることもあると思います。そして、それが引いてはそこで暮らす人の心の豊かさへと繋がっていきます。
今後も「緑のある暮らし」は、実現に向けて引き続き研究を続けていきます。

 

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