杭が思い出の作品に。
宮崎公園で育む地域のつながり

フージャースでは千葉市中央区で、ファミリー向け分譲マンション「デュオヒルズ蘇我ザ・スカイ」とシニア向け分譲マンション「デュオセーヌ千葉蘇我」の一帯開発プロジェクトを行いました。
これに伴い、マンション近くにある宮崎公園のリニューアルにも取り組み、工事の前後に地域のみなさんとワークショップを開催しました。
第1回の様子は「公園リニューアルに向けたワークショップで育む『豊かな暮らし』」(2025年8月22日掲載)、第2回の様子は「『自分たちの公園』をつくる、宮崎公園リニューアルオープンイベント」(2026年7月17日掲載)で紹介しています。
今回は、企画から運営まで携わった関東学院大学・中津研究室の中津秀之先生と三宅剛史さん、千葉大学・伊藤研究室の澤村亮太さんのお話とともに、第3回ワークショップの様子をお伝えします。

 

役目を終えた杭が「小さな家」に

2026年4月、リニューアルした宮崎公園で行ったオープニングイベントでは、芝生の養生エリアを囲う木杭に、参加者が「公園でやりたいこと」や将来の夢などの願いを書き込みました。それから約5ヶ月。芝生が育ち、約60本の杭も役目を終える時期を迎えました。当初はすべての杭を撤去し、中津研究室で保管する予定でした。しかし、せっかく一人ひとりが思いを込めた杭です。そのまま研究室に置いておくのではなく、参加者の手元に残せないだろうかと考えました。

杭は長さ約60cmあり、先端がとがっているため、そのまま家庭に持ち帰るには危険があります。そこでアイデアを出したのが、中津研究室の学生でした。杭の先端約15cmを切り取り、その形を生かして「小さな家」を作ってはどうかと考えたのです。さらに、ランドスケープデザインを学ぶ研究室らしく、スチレンボードに庭を作り、そこに家を立てることで、一人ひとりが自分だけの風景をデザインできるようにしました。残った約45cmの杭も活用します。木の板に立て、前回のワークショップで作った風鈴の鈴を取り付けて、玄関などに飾れるスタンドにしました。学生たちは事前にいくつもの見本を制作。当日は、子どもたちがマスキングテープやシールなどを選び、学生と相談しながら思い思いの作品を作り上げていきました。

 

草がお金に! 地域通貨「クサ」の仕掛け

今回のワークショップには、もう一つユニークな仕掛けがありました。作品づくりに使うマスキングテープやシールなどの材料は、学生に「お金」を払って購入する仕組みにしました。そのお金となるのが「クサ」です。足元に生えている草を1本抜けば、地域通貨「1クサ」となり、欲しい材料と交換できます。もともとは、みんなで公園の草を抜く時間を設ける案もあったそうです。しかし、草むしりを「やらなければならない作業」にしてしまっては楽しくありません。そこで考えたのが、草そのものを通貨にすることでした。

子どもたちは「クサ」を集め、学生から材料を購入します。こうしたやり取りを通して、前回以上に学生と子どもたちの会話が生まれました。ワークショップが終わった後にも草を抜き続ける子どもの姿があったそうです。中津先生は子どもたちに「これから公園に来たときも、今日みたいに草を抜いてもらえたらうれしい」と伝えました。公園をきれいにすることを義務にするのではなく、遊びの延長としてみることで、公園を自分たちで手入れするきっかけを作りました。

 

子どもと学生が一緒に考え、つくる時間

当日は不安定な天候でしたが、20組弱の親子が参加してくれました。関東学院大学から約10人、千葉大学から約8人の学生も参加。参加した親子の組数に対して学生の人数も多く、今回は学生が子どもたち一人ひとりとじっくり関わることができました。中津研究室の三宅さんは、「子どもたちとペアになって相談したり、話し合ったりしながら進めることができました。一人ひとりとコミュニケーションを取れたことで、子どもたちの満足感や達成感にもつながったのでは」と振り返ります。実際、子どもたちは時間を忘れるほど夢中になって制作していました。参加者アンケートでも「学生とのコミュニケーションが楽しかった」「一緒に考えてくれるのがうれしかった」といった声が寄せられました。

伊藤研究室の澤村さんは子どもたちの創作意欲が印象に残ったそうです。「見本を見て『マスキングテープはこう使うんだ』と刺激を受けたり、小さな子は保護者の方と一緒に作ったり。デザインにいろいろな選択肢があったので、年齢にかかわらず楽しんでもらえたのかな」と話します。子ども自身が選び、学生と相談し、自分のオリジナルの作品を作るといった小さな共同作業が、公園のあちらこちらで生まれていました。
交流が生まれたのは、学生と子どもたちの間だけではありません。保護者同士が自然に会話を交わしたり、地域のみなさんも制作に加わったりと、公園に集まった人同士の交流も見られました。

 

学生たちが実感した、準備と現場での学び

楽しいワークショップの裏側には、学生たちによる地道な準備がありました。前日に、公園に設置していた杭を一本ずつ抜くところからスタート。土のついた杭は、そのまま作品にはできませんが、水で丸洗いしてしまうと翌日までに乾かない可能性があります。どうやって土を落とせばいいのか、学生たちは道具や方法を試しながら作業を進めました。さらに、参加者が自分の杭を見つけられるよう、きれいにした後はできるだけ元の場所へ戻して一晩乾燥させました。「ワークショップは準備が一番大切で、準備で決まると先生から聞いていましたが、今回はそれが身に染みて分かりました」と三宅さん。
澤村さんは、当日の役割や作業場所を細かく決めすぎなかったことにも学びがあったと話します。「学生自身が考えて動いたり、参加者と場所を譲り合ったり、その場の状況に合わせて行動できました。普段は中高生を対象としたワークショップに関わることが多いので、小学生や未就学児との関わり方も勉強になりました」。学生たちにとっても、多くの学びがあるワークショップとなったようです。

 

公園を「自分の場所」に

中津先生が一連の取り組みを通して大切にしているのは、地域の人が公園を「自分の場所」と感じられるようになることです。行政が管理する場所を利用するという意識ではなく、お弁当を食べたり、好きな草花の様子を見に来たり、自分の空間としてきれいにしておきたいと思えることが重要だといいます。「公園を自分の空間だと思うからこそ、きれいにしたい、安全にしたい、見守りたいという気持ちが生まれる。そういう地域の人間関係を育てる場所になってくれたら」と中津先生は話します。
また、学生と地域が関わる意義についても、お互いに学びがあることが大前提だと考えています。学生にとっては、企画から準備、地域との調整、広報、当日の運営、アンケートや振り返りまで、一連の活動そのものが学びになります。一方、地域にとっては、普段接する機会の少ない大学生と子どもたちが出会い、保護者同士や地域の人にも新たなつながりが生まれます。さまざまな世代が同じ場所に集まり、それぞれに学びや楽しみを得られることも、この取り組みが目指すものです。

 

小さな杭から、未来の地域とのつながりへ

今回作った家やスタンドは、参加者それぞれの家庭へ持ち帰ってもらいました。澤村さんは、「家に飾られた杭を見て、今回の活動や公園のことを思い出して、『また公園で遊んでみよう』と思ってもらえたら。今回参加した小さな子が成長したとき、杭を見て親御さんから話を聞き、公園に関心を持ってくれたら、このワークショップをやった意味があると思います」と話します。三宅さんも、「今回をきっかけに、草を抜いたり、自分たちでイベントをしたり、公園を自分たちで管理するような活動につながってほしい。そこからコミュニティが生まれていくことが、地域にとっても良いのでは」と期待を寄せます。
公園を整備して終わりではなく、そこに暮らす人が使い、手を加え、人と出会うことで、少しずつ「自分たちの場所」になっていく。中津先生が思い描くのは、子どもたちが成長して地域を離れても、いつかまた戻りたいと思えるような、人と人との関係が育まれる街です。
フージャースでも、マンションという住まいをつくるだけでなく、その周辺も含めて豊かな暮らしを育んでいくことを大切にしています。子どもと大学生、保護者、地域のみなさんが一緒に手を動かした今回のワークショップを通して、家に飾られた小さな杭が公園で過ごした時間や出会った人たちを思い出すきっかけとなり、これからも地域とのつながりが育まれていくことを願っています。