「コモンズ」と「コミュニティ」

地域とつながる、持続的なコミュニティの形

私たちは、2018年から、「街の活性化をどうしたらよいのか」を考え続けてきました。そして、2019年には「街」の中でも、特に「公園」に着目し、利活用とコミュニティ醸成に取り組み始めました。
2019年秋につくば市竹園西広場公園のリニューアルが完了したあと、地域の人々とともに立ち上げた「つくばイクシバ!」。
「つくばイクシバ!」のコミュニティ醸成は、公園という公共の場を活用した新しい暮らしの提案となりました。地域とつながり、自主的で持続的なコミュニティとして育っており、2021年11月には、地元メンバーに引き継がれます。

デベロッパーの提供する新しいコミュニティの形

私たちは、これまで分譲したマンションにおいて、コミュニティ醸成に取り組んできました。
同じマンションで暮らす人たちが、居心地よく暮らしていけるように、顔合わせの場として交流会を企画しています。しかし、「欲しかった暮らし」を追求する中で、その形について改めて考えるようになりました。交流会に参加する人同士のコミュニティを生むだけでは、「欲しかった暮らし」に繋がらないのではと考えたのです。

コミュニティが大きく広がっているマンションを調べると、実は、マンションで暮らす人だけでなく、地域の人とのつながりが生まれていることが分かりました。
マンションで暮らす人々にとってのコミュニティとは、当然ながらマンションだけで完結するものではありません。私たちは、マンションの外にも関わっていく必要があると考えました。
その考えを形にしたものが「つくばイクシバ!」です。マンションの隣にある公園を活動場所とすることで、マンションのみではなく、地域のコミュニティの場を目指しました。

さらに、「つくばイクシバ!」では、これまでの交流会とは異なるコミュニティの生まれ方がありました。
交流会では、一度にたくさんの人と交流できます。しかし、その後に会う機会はいつになるかが分からないため、親交を深めることが難しい場合があります。
「つくばイクシバ!」は、作業日が定期的にあるため、作業に参加することで自然と何度も顔を合わせるようになります。何度か顔を合わせるうちに、少しずつ交流が始まります。時間をかけて少しずつ広がっていくコミュニティは、日常に馴染み、持続的なものとなり得ます。

地域の人たちが行き交う公園で、ゆっくりと時間をかけて育まれるコミュニティは、わたしたちが追求する、人々の「欲しかった暮らし」の情景のひとつだと感じています。

「コモンズ」から生まれるコミュニティ

「つくばイクシバ!」のコンセプトは、「芝生育ては地域育て」。芝生育てとは、雑草を抜いたり芝生を刈ったりする作業のことだけを意味するのではありません。芝生を大切にする意識を持つことが、芝生育ての第一歩です。
例えば、ピクニックをするときには、ビニールシートではなく芝生に優しいゴザを敷く、雨の日の水たまりの状況を観察して情報共有をする、縄跳びで擦って芝生を傷めないように芝生ではない場所を選ぶ、などです。「つくばイクシバ!」では、そういった意識を日常的に持つことを、公園を使う人々に広めています。
また、作業には、公園で遊んでいる家族が、興味を持って参加することもあります。「いつも使っている公園だから綺麗にしたい」と言って、真剣に参加しています。

「自分たちの共有財産だから、より居心地よくするために大切に使う」、そういった共通意識が持たれている場所を、私たちは「コモンズ」と呼ぶことにしました。
「つくばイクシバ!」では、竹園西広場公園の芝生が「コモンズ」です。その「コモンズ」を大切にするために、人々は、利用方法を工夫したり、雑草を抜いたりしています。「コモンズ」への関心が高まるごとに、公園の利用が増え、公園を使う人々の会話が増えるようになります。

「街の活性化をどうしたらよいのか」を考えることから始まったつくばプロジェクト。
「つくばイクシバ!」を進めてきた中で、「コモンズ」というキーワードに辿り着きました。

「コモンズ」を軸にしたコミュニティは、人々が大切にしたいと思う共有財産があって、はじめて生まれるものです。そういった場所をつくり育てていくことが、デベロッパーの提供するべき新しい価値だと、私たちは考えます。
つくばから始まった「コモンズ」を、これから全国に広めていきたいと考えています。