家を自分でつくること、小さな家で暮らすこと。

photo: YADOKARI提供

以前、「小さなキッチンvs大きなキッチン(2019年10月25日配信)というタイトルで、コラムを書いたことがあります。小さいからこそ、そこに工夫や創造性が生まれ、そして美味しい料理をつくろうという気持ちがうまれてくるという話でした。さらには日々のそうした丁寧な食事から、食の意味を考え直すことができるといった内容でした。
今回は同じような考え方ですが、小さな家について考えてみましょう。
小さな家は、アメリカを起点に多くの国で広がりをみせており、その運動は「Tiny house movement」と呼ばれています。この活動が広がるには、いくつかの大きな社会背景があったと思います。

  1. 家の価格が高くなりすぎたこと。または、収入における住宅に関わる費用の割合を下げて、そのぶん暮らしを楽しむことへ向けていくこと。
  2. かつて大きな家を持っていた人たちが、家を持て余し始めたこと。子供たちが、巣立って老夫婦だけになると、大きな家の日々の手入れも大変になってきます。そこで庭に小さな家を建てて、自分たちがそこに住み、大きな家を賃貸や民泊などにして、収入源を得ること(これにはAir bnbが大いに役にたったようです)。

大きくはこの2つの理由なのですが、もう一方で人々の家に対する価値観の変化もおきています。所有することより利用すること、社会的なステータースより自分の暮らしを豊かにすることに、価値を持ち始めているとも言えます。
最初の写真をごらんください。この家は施主自らがDIYで建てたものですが、家が小さいことで、自分で建てることが可能になります。そうすると家への愛着が自然とわくものです。またメンテナンスなども自分でできるので、過剰な設備を始めから入れる必要もありません。シンプルな機能でも十分自分でコントロールできるようになりますし、必要なら足していくこともできるでしょう。
こうした一連の流れは、家の原点を私たちに考えさせてくれます。特に食べることと、寝ることが家の原点です。(ただし、多くの人が食事を楽しむためのものとして、考えられるようになったのは近代になってからで、それ以前は、生存のための食事の意味合いが強かったのです。近代になって、おいしい料理を楽しむということが重要になったことは、言うまでもありません。)家に戻って、家族で料理をする。友人を招いて一緒に食事をする。こうした時間を楽しむことは、我々現代の暮らしの理想像でもあります。
近代という時代を振り返ると、それは工業化に伴う便利さの追求でした。時間を効率的に使うという概念も、この時代に生まれました。それは限りある時間を、できるだけ生産のために使うということでした。そして我々は便利さを手に入れるのですが、同時に自分でゼロから行う「創造」ということを失い始めました。それを取り戻すには、まずはできた製品を買うのでなく自分でつくるということなのかもしれません。企業によってつくられた製品を買わずに自らの力でつくることが、生産に伴う消費を抑えることへとつながっていくとも考えられます。こうしたことを具現化するのに、小さな家を自分で作るということはとても有効にはたらいたとも言えるのです。

ソーシャルデザインカンパニー、YADOKARI(2019年7月12日配信)で紹介したYADOKARIの2人から、「小屋部」といって、みんなで小屋をつくる活動が盛り上がっているという話を聞きましたが、これらの活動をする人たちの意識の中に、こうした創造することを取り戻す喜びを垣間見ることができるのです。
さてここまで書き進めて、次の時代の食事やキッチン、そして家はどのようになるかということも興味が湧いてきます。便利さと丁寧さはどちらが優勢になるのでしょうか。さらに家族という概念も今までとは変わりそうです。東京ではすでに47.3%の人が単身世帯になっています(2015年総務省『国勢調査』より)。コンビニで出来合いの食事を買う方が、安く栄養バランスも考えられているかもしれません。持ち帰って盛り付けだけをするというのも多くの人がおこなっているでしょう。または、コンビニのイートインコーナーですませる人もいるかもしれません。友達と食べるならレスランに行く方が便利かもしれません。しかしです。時代は常に行ったり来たりするものです。多くのことが便利な、そしてロボットのように人工知能を搭載した機械との共存がはじまる時代に、あえて自分で作るということも、一方で時代の変革の時におこる人々の自然な行動なのかもしれません。
あえて家を自分で作ってみる。そして小さな家を。みなさんの考えをお寄せください。

小さな家を、自分の手で作ってみたいと思いますか?

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