食生活と料理に関する座談会を終えて

Valerii Honcharuk / PIXTA(ピクスタ)

3年以上続くコロナの影響で、私たちの暮らしには大きな変化がありました。食生活や料理における変化もその一つです。
コロナ禍に家での食事の機会が増えたことで料理へのこだわり意識も芽生え、また在宅の機会が増えたことなどを背景に、料理の効率化も一層意識されるようになっています。
そこで、今後のキッチンには効率と家族のコミュニケーションの両立を求める傾向が一層強まると考え、食生活と料理の視点からキッチンに関する考えを伺いました。
なお、アンケートの結果は、欲しかった暮らしラボにて「【結果】「食生活と料理」に関するアンケート」(2023年7月7日掲載)で報告しています。 

 コロナ前と比べて自宅で食事をする機会は、およそ4割の人が増えたと回答しています。その一方で、料理に関する負担も増え、使いやすく効率よく料理ができるキッチンの需要が高いと感じました。 

 これらの結果を踏まえて、7月9日から計5回にわたって行った「食生活と料理に関する座談会」の内容を紹介します。 

 

座談会の目的
コロナの影響で、自宅で食事をする機会が増え、使いやすく効率よく料理ができるキッチンが求められている。また、ストック品が増えたという声も多く聞かれた。
そこで、マンションのLDK空間の居心地をよくするためにも、料理の効率と収納量をアップさせるパントリーを設置するプランを検討するにあたり、ご意見を伺いたい。

実施日
202379()10()11()13()14()の計5

参加者
30代~50代の男女、計11名の方にお話を伺いました。

 

座談会の要約

今回座談会に参加された方全員が、コロナ前後で食生活の変化があったと回答されました。自宅での食事が増えて料理の負担が増えたり、外食という楽しみが減ってしまったりといったマイナスの変化がある一方で、夫婦でキッチンに立つことが増えたなど、プラスの変化も少なからずあったようです。

ここ数年で買ってよかった調理家電を伺うと、ミキサーやトースターなどさまざまな調理家電を購入されていましたが、その置き場所に困っているという声も聞かれました。

家電に限らず、防災備蓄品などの収納に困っている方は多く、パントリーの収納力に魅力を感じる方が多くいらっしゃいました。「収納が増えれば欲しかった家電を買うことができる」、「防災備蓄品を定期的に見られてローリングストックがしやすくなる」、という意見が挙がっています。パントリーがない今の住まいでは、ウォークインクロゼットに防災備蓄品やお米などを置かざるを得ないという声が多く聞かれました。

ごちゃごちゃしがちなキッチンをスッキリ見せることができる点も好評でした。特に40代以上の方やDINKSの方から、生活感のないキッチンにしたいという声が聞かれました。
そのため、雑多なキッチンを隠せる扉はあった方がいいという意見が多く挙がっています。

熱や湿気がこもる懸念と、現在のスタイルへの慣れから、調理家電をパントリー内に置くことには難色を示される方が多くいました。特にレンジはキッチンの背面に置きたいという意見が多く、食器棚もキッチンにあるのが当たり前という感覚から、パントリー内に食器を置くことは想像しにくいようです。
そのせいか、パントリーの位置に関わらず、調理家電や食器棚がパントリーの中にあると、キッチンから離れていると感じられてしまいました。

 

座談会を終えて

今回思った以上に、ウォークインクロゼットを多用途に使っている方が多いことがわかりましたが、現在のキッチンの収納が十分でないためにクロゼットを使わざるを得ない状況でもあり、パントリーを欲しいと思う方も多くいらっしゃいました。
キッチンをスッキリさせたい、綺麗に保ちたい、というのは皆さん共通の想いでした。特にリビングから見えるキッチンの見え方がポイントとなりそうです。日々の生活の中でリビングの滞在時間が長いため、リビングから見えるキッチンが雑多だと、居心地の悪さを感じてしまいます。
キッチンを綺麗に保ち、LDKを居心地の良い空間にしてスッキリ暮らす、というのが今後の一つのテーマになりそうです。

それを考えるにあたっては、世代やライフスタイルによる違いを考慮しなければなりません。キッチンを綺麗に保ちたい気持ちは誰しもが持っているものの、その優先順位は暮らし方によって変わります。
子育て世代の方は綺麗なキッチンを理想としながらも、使いやすさや手の届きやすさなど、見た目よりも機能や効率を重視する傾向がありました。キッチンの雑多な感じを隠して綺麗に保ちたいと考える方は、年齢が上の方やDINKSの方に多くいらっしゃいました。

世代やライフスタイル別のプランを検証するとともに、皆さんのキッチンに対する概念も変えていく必要がありそうです。例えば食器棚は生活感を出すものの一つですが、キッチンにあるのが当たり前だと思われています。レンジも同様です。キッチンの背面にレンジがあるスタイルの慣れから、パントリー内に置くことに抵抗を感じる方がいらっしゃいました。

世代やライフスタイル、そして現在の暮らしの当たり前、それらのバランスを取りながら、居心地のいいLDK空間を実現するためにパントリーのある暮らしの検討を、引き続き行っていきたいと思います。