コミュニティとビジネスの関係(続編)

【連載】コミュニティについて vol.9

bee / PIXTA(ピクスタ)

前回の「コミュニティとビジネスの関係」(2020年4月3日配信)で、コミュニティの活動とビジネスをつなげてはいけない、といことを書きました。もう少し、このことについて考えてみましょう。

今私たちは、20世紀に作り出してきた社会経済の仕組みが、大きく変わろうとしていることに、気づく必要があります。前回のコラムではこのことを「既存のビジネスモデルと、今の時代の様々な動きが、うまく符合しなくなってきているのではないでしょうか」と書きました。
これは私たちが慣れ親しんできた様々な方法では、現代の問題が解きにくくなっているということです。特に経済の仕組みについては顕著です。よく言われるシェアリングエコノミーという「共有経済」の考え方は、人と人との関係性を重視した、信頼関係を基本にした経済のあり方です。そこでは交換経済や贈与経済といった、現在の金融資本主義とは違う考え方をしています。これらの仕組みはかつてあったものですが、20世紀になって失われたものです。しかし、そうした経済圏を再度実現しようとすると、現代の仕組みとは矛盾してくるのです。

社会システムへの疑問

20世紀の中心であった金融資本主義の社会システムに陰りが生まれたのは、90年代の後半頃からでしょう。NPOという非営利組織がうまれ、利益を追求するのでなく、社会の課題に対して、永続的に活動ができる仕組みの模索が始まりました。その背景には、社会の理想と、企業の理想、個人の理想の間に、少しずつ隙間が生まれたこともあります。また、80年代から世界で起きている、環境保護などの地球環境保全へと意識が向かったことも挙げられます。そしてその後、日本のみならず、多くの国々で金融危機が訪れます。経済復活はするのですが、その裏側で人々の意識の変革が進んでいきました。2011年の東日本大震災のタイミングは、特に人々の意識の変化に火がついたようにも見えます。
それ以降、日本は大きく変わっていきます。社会企業家と呼ばれる企業家が、若者たちの理想の一角にもなります。国内にとどまらず世界のNPOやNGOなどに参加する若者も現れてきます。

常時接続社会とテクノロジーの進化

社会の変化は、さまざまな要因が重なり合って進みます。2007年のスマートフォンの出現も、意識を大きく変えた要因のひとつです。常時接続という社会が現れました。どこにいても常に誰かと繋がっていること、そこではコミュニティごとに、様々な顔を持っているという、ある意味一人の人間の中に複数の人間がいるような状況がうまれ、そしてどこまでいっても完全な一つだけの個がない、ということにも気づき始めました。このようにテクノロジーの進化は、人間の意識を変えていきます。2015年ごろになると、人工知能やバイオ技術の発達によって、機械と人間の共存が真剣に議論されるようになります。また、ブロックチェーン技術によって、金融システムや合意形成システムへの新たな選択肢の可能性も広がります。
このようにして、私たちは90年代の終わり頃から、どうも経済発展だけでは社会が発展しないことや、幸せは手に入れられないことを感じ始めるのです。そしてその解決の糸口を、人と人との関係性の回復へと求めていきます。そうした関係性の回復が、コミュニティ活動の中にある人々の心の様相なのです。

信頼資本社会

こうして考えると、我々の今いる2020年という年は、すでに新たな時代に突入していると考えてもいいのかもしれません。20世紀を「工業化」を基本とした経済発展の時代だとすると、21世紀は、人と人との「関係性への信頼」を基本としながら、機械と人間が共存する「信頼資本社会」といえるかもしれません。
さて、始めの疑問に戻りましょう。ビジネスとコミュニティの関係です。ここでいうコミュニティとは、社会の意識や個人の意識の表れです。一方、ビジネスは企業の活動です。しかも企業は、前時代的な経済発展を基本とする思考が圧倒的に強いです。それゆえにこの2つの活動は、因果関係を求めようとすると、合わなくなるのです。また、性急にその2つの違った意識を合わせようとすると、稚拙な因果関係を作り出してしまうのです。今するべきことは、そこの矛盾を考えながらも、違った位相のものを同時に、それぞれ真剣に行うことなのです。すぐにではなくても、いずれその2つのことがシンクロする時が来るはずです。もちろん周り巡って、2つの活動が重なることがあるかもしれませんが、それこそ因果関係でなく「シンクロ」と捉えて、偶然だと考えた方が懸命です。しかも、意味のある偶然と思いましょう。

このコミュニティvol.9は、かなり難しいのですが、行動については単純で、難しく考えずに目の前のことを真剣にやること、目的や結果を探さずに、感じたことを素直に突き進むことが、コミュニティ活動の原点であり、活動を広げて行く原動力なのだと考えてみてください。次回からは、前回と今回のコミュニティの話に基づいて、いくつかの事例をお話ししたいと思います。いかがでしたでしょうか、コミュニティとビジネスについて、みなさんのお考えをお寄せください。

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